白、薄紫、濃い紫、赤紫に涼しげな浅縹の色に州浜の文様。
白と紅のグラデーションが美しい梅かさね。
白、薄紫、薄緑、緑に白は、新緑の輝きがまぶしい。
桜が散り、雨上がりの夕暮れに耳を澄ますと、
土のなかで何かがしずかに目を覚ます気配。
湿って柔らかく、温かい土のなかで秘かに生まれたばかりのいのち。
土のほんの一粒の隙間に満ちていく。
青き葉をすすーっとしたたった一滴は、
きらきらと光り、やがて土の一粒と出会う。
月を見上げる。今宵は満月。
すぐれてなまめかしう、 得も言われぬよき香りが近づいてくる。
ゆっくりと目を閉じる。
白、朱の桜かさね、濃き紫の指貫袴がまぶたの奥でみるみる大きくなる。
いよよ、と高鳴る鼓動にそっと手を置いた。
双葉よりも芳し。なつかしき香りを胸いっぱいに吸いこんだ。
忘るまじ。